第5話

5/40
前へ
/40ページ
次へ
それにしてもジュンさんの事は気になる。杏奈から会長の事は聞いていた。 会長とは名ばかりで、実質は最高権力者として君臨しているのだと聞いた。 『恐い人なのよねぇ。まあ、あたしには優しいんだけどね。それも結果出してるからだけどさ』 その男がジュンさんも天才だと言うのだから、気にならない筈はない。 「気になるわよね。やっぱり…」 「ジュンちゃん…」 ルームミラー越しに私を見て呟いたジュンさんを、何故だか佐久間が押し留める風に名前を呼ぶ。 「大した話じゃないわよ。前にね、ちょっと大きな会社で働いてたの。一身上の都合ってので辞めちゃったら…偶々その会社が傾いてさ、噂に尾ひれが付いて私が抜けたのが原因とか…ね。まあ、そんな事言われた時期があっただけよ」 「そうなんですね…」 「そう、その程度の事よ。大袈裟なんだから、あの会長さんったら」 そう言って笑い飛ばすジュンさんを、助手席の佐久間は静かに見ていた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

228人が本棚に入れています
本棚に追加