第5話

佐伯の背後に回り画面を覗いた。画面に映るのは取材中の写真らしかった。

中央には以前マスコミを騒がせた小太りの男が熱弁している。その写真の隅に映る男…紛れもなくジュンさんだった。

「この人です…誰なんですか？」

「こいつの事件は知ってるだろ？もっともこの取材の頃迄は、多少強引でもルールに乗っ取って経営されていたんだよ。実質会社の運営をしていたのは大友だな…」

「危なくなったから辞めたって事ですか？」

「違うな。大友が辞めてからコントロールが効かなくなった…だから大友は捜査線上にも上がって無い。まあ、聴取ぐらいはうけてるだろうがね。なあ、大友は佐久間の側に居るのか？」

「そうですね、佐久間は事実上の社長だって言ってました」

余計な事を口走ったかも、と思った。佐伯は私の様子を伺う。

「心配するなよ。昔なら大友に取材でも申込むとこだがな。今回のカオルも少しは納得がいった…その程度だ。邪魔はしないから気にするな」

「もう一つだけ良いですか？その、大友さんが辞めた理由とかって…」

「それなんだよ。誰も理由を知らないんだ、事件の後随分大友を探したんだけどな。何処も奴を見つけられなかった」