第5話

8/40
前へ
/40ページ
次へ
今のジュンさんからは、想像も出来ない事ばかりだ。佐久間といいジュンさんといい別の場所に居る人達なのだろう。 「ありがとう…佐伯さん」 「いや、別に大した事じゃない。まあ、何か秘密もありそうだが…ともかく頑張れよ」 誰もが何かを感じている。けれど目の前の事を進めるのが先決だった。私の仕事はnoxで、佐久間やジュンさんの事を探る事じゃない。 一通り佐久間の条件はクリアした。後は映画のキャストに会う事ぐらいだった。 気が付けば、創刊迄ひと月。サイトの小説はエンディングへと向かっていた。 サイトを開き始めから読み返してみる。 バタバタと仕事に追われ、女の転換期を迎える主人公のエリ。同時に現れた恋愛対象の二人。 若く才能に溢れる陶芸家蒼と、仕事に情熱を燃やし成り上がった榊。 主人公の目線で書かれているけれど、男達の苦悩もエリの苦悩もイラつく程に伝わる。 何方かを選べば終わる…そんな単純な事では無い。おそらくどんな選択をしても、後悔は残るだろう。 女達はそのジレンマを自分と重ねながら、物語に没入しているのだろう。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

228人が本棚に入れています
本棚に追加