196人が本棚に入れています
本棚に追加
しばらく、眠れなかった。
銭湯での出来事を思い出して。
転んで起き上がる瞬間が、たまらなく恥ずかしくて、起き上がる事が出来なかった、あの小さな男の子の心は、確かに一瞬ひどく悩んだと思うの。
痛みよりも、何だか世間から笑われるんじゃないかって不安のが大きくて、もどかしくてワンワン泣いた。
「アホだなぁ、おまえ…よしよし、いい子だ…」
キスで優しく包んで慰めて。
そんな彼に一言、そう告げて。
あの男の子は、一瞬で嫌な思いを忘れた。
私も、泣いてた。
独りで、どうにも変わらない世の中に腹を立てて。
自分は変わらないのに。
他人には、世の中には自分の都合の良いように変わって欲しいと強く思いながら。
解決できない苦しみに、泣いて…。
あの人の言葉が、家に帰って時間が経つにつれて、私の心に滲みた。
「アホだなぁ、おまえ」
そうなの。
私はアホなんだ。
そう思ったら、少し気持ちが軽くなって、泣いていた事がアホに思えた。
最初のコメントを投稿しよう!