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すると、元彼の肩に手が掛かった。
…へ?
「…ん?」
私も元彼も、同時に動きが止まった。
「ちょっとあんたねぇ、俺の彼女に何してくれてんの?」
元彼は振り返り、私も身体を傾けて覗いた。
「俺の彼女?」
「あぁ、そうだけど。何か文句あんの?」
あぁっ?!
あぁぁーーーっ!!
私は瞳孔を開かせ、見つめるその先にいたのは…。
「ほら、おいで」
元彼を無視して、両手を差し出される。
もちろん私はその手にすぐ掴まった。
こないだの、銭湯で出逢った子連れの男だった。
「誰なの、コイツ」
親指を元彼へと立てて、チラッと睨み付けて、その男は言う。
「ごめんなさい、元彼なの」
演技しなきゃ。
「そう、だけどなおまえ、元彼とは言え、あんまりむやみに愛想振りまくもんじゃねぇぞ、分かったか?」
「は、はい…」
「こういう危ない目に結局合っちまうんだから、それはおまえの自業自得だよ?なぁっ?」
「うぅっ…」
その男はグッと私を寄せて、頭を撫ててくれた。
「てな訳で、俺たち現在進行系の恋人同士なんでねぇ。あんたも立派な社会人なんだから、終わった関係なのに、ウダウダ今更言ったりすんなよなぁ」
この男は、何となく状況を把握していたのだろうか。
上手く帳尻を合わせてくれていた。
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