clean 3 王子様は嘘つき

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突然向い合ってきたかと思いきや、私の横髪を退けて頬に触れてきた。 「なんて、ツラしてんだよ。ブーちゃんは可愛くないぞ?」 ブーちゃん? う、嘘っ?! そんな酷い顔してる? 照れながら、その男の視線に合わす。 ポツリと言ったのだ。 「アホだな、おまえ」 「うん…」 私は素直に、頷いてしまった。 「よしよし、いい子だ…行こっか」 私はまた、縦に頭を振った。 わざとカップルを装うために、男は私の肩に手を回して、二人で寄り添って歩いた。 どうしよう…。 こんな事が現実に、起こっていいの? 私はドキドキしながら、その男の胸の温かみを感じていた。 元彼が気になって振り返ろうとした瞬間、 「見てやんなよ。未練残すような行動すんな…」 そう言われて私は俯いた。 「俺が変わりに見てやる…」 チラッと男は振り返る。 「まだ居ます?」 そう聞くと意外な言葉が返ってきた。 「居るよ。気の毒だけど、落としてやるしかなさそうだな…」 「えっ?…」 私はその男を自然と見上げた。 …チュッ… おでこに触れるか触れないかで。 軽くキス。 間違いなく演技なのに、確実にキスだった。 「笑ってみ?」 その言葉に、言われた通りニンマリ笑ってやった。 そしてまたチラッと男は振り返ると、 「おっ、やっと車に乗り込んだぞ。これで無事にフンギリついたって感じだな」 「あ、ありがとう…」 真剣に恥ずかしい…。 本気で恥ずかしい…。
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