clean 9 涙

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「だってだって、本当に本当にうるさいのが嫌で嫌で、つらくて苦しくて悩んでたんだものぉ~!」 「意味分かんねぇけど…よしよし」 困った顔をしながらも、永田さんは私の頭を軽く撫でた。 「とりあえず、済んだ事をまた思い返して泣くのは、無駄な事だからなぁ。とっとと泣き止め」 もっと優しく言ってくれないと無理…。 ポロポロと涙を落としながら、何度も拭く。 「自分の家なのに…毎日落ち着かなくて…外へと出ても…今度は帰ろうとする度に足が進まなくなるの…癒しの場所じゃなくなってて…つらかったの…」 「そうかぁ…。それで、まさか銭湯だの夜遊びだの、出掛けてたとか?」 私は頷いた。 「逃げるしか方法は見つからなかったのか?」 そんな事ないけど。 「あんたは正しく住んでる。向こうが間違って住んでんだぜ?怒鳴り込むんじゃない。知らない奴には、教えてやんなきゃ。社会人同士なんだから、理解出来ない訳ないんだ…。なぁっ?そうだろ?」 鼻水をすする酷い顔した私を、真っ直ぐな視線で、覗き込む。 「まぁ、いい。あんたは女だからなぁ」 永田さんは私の頭を、優しく撫で撫でする。 「よしよし、泣くな…」 私は優しい言葉に、そのまま永田さんの胸の辺りに泣き顔をそっと埋めてみた。 「アホアホだなぁ…あんたって女は…」 心臓の微妙な揺れで、私はこの人の人間としての温かさと深さを知った。 この胸の中に、泣き顔を埋めると自然と涙が止まる事も知った。
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