第5話

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 とにかくシャワー。それから、あたしの古い学生ジャージを貸してみる。そして、粗雑なコーヒーを出した。  あたしは他人の世話をやくのは下手だし、好きではない。しかしこの場は特別だ。 「どうしてあたしのところに来た?」  声に出してから思う。まるでもう、信也が来てはいけないような言い回しではないか。    信也と分かったとき、驚きと同時に生まれた感情。そんなもの、みっともなくて晒せるはずもない。  それでも、支えられる側になりたい我が儘なあたしがいる。演じたくない強がりの「美月」との戦い。 「……ごめん」  コーヒーカップを抱えたまま、ただ繰り返す信也。  沈黙が続いた。どうすればいいのか分からない。  あたしは立ったままワンルームの壁に寄りかかり、コーヒーに口をつけた。  上から見た今の信也は無様だ。色落ちした紺のジャージが一層惨めさを増している。床に座って小さくなっているその姿は昨日のあたしと同じだ。  空になったカップを置くために散らかったテーブルに近づく。近くなる背中。  後ろからそっと抱き締めるとか。  有り得ない。
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