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翌日。
「ちょっと、美月、あなた大丈夫?」
ひどい顔をしていたのだろう。先輩は朝の挨拶のかわりにそう言った。
「はい、なんとか」
他にどう言えばいいというのか。
「悩みがあるなら聞いてあげるわよ。彼にフラれた?」
「そんなんじゃないですよ。大丈夫です」
実際はきつい。だけど、どうしようもない。親友にすら頼れないのに仕事だけの付き合いしかない人間に何を相談できるだろう。耐えるしかないのだ。逃げ道への扉が閉まるまで。
仕事をこなしているときは少しだけ忘れられる。どちらも半端になって頭で中和するから。失敗をギリギリでかわしつつ、自由を求めて時計を睨む。
終業。途端にまた自己嫌悪があたしを襲う。生きて行くために削った時間。無駄だと思ったら終わりなのに、あたしは受け入れて墜ちる。
「タスケテ……」
誰もいないロッカールームで呟いた。
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