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「さむっ…」
声が漏れる程の、冷たい風が吹くこの季節。私は、『大久保写真館』での初めての冬を迎えた。
大学での就職活動中、悉く落とされ続け、四年の卒業間際、諦めかけた時に内定が出たのが『大久保写真館』だった。
社長の大久保 奏〈ｵｵｸﾎﾞ ｶﾅ〉さんは３０歳。
『写真の事は、何も分からないし、正直、芸術センスもありません。』
成るように成れ！私のこの正直さを気に入って頂けたらしく…まさかの採用を頂けた。
社長は『社長』と呼ばれるのが好きではないらしく、スタッフ全員が『奏さん』と呼んでいる。
とても、優しくて、喜朔で…憧れの存在だ。
スタッフは奏さんと私以外に３人いる。
奏さんのアシスタント。
香山 大地〈ｶﾔﾏ ﾀﾞｲﾁ〉さん。少しだけチャラチャラしてるけど、とっても優しい先輩で、お兄さんの様な雰囲気。奏さんとは同級生で、一緒に写真館を立ち上げたそう。
メイク担当。
吉岡 未来〈ﾖｼｵｶ ﾐｷ〉さん。２７歳という年齢を感じさせない、可愛らしさがあり、なのに美しくて綺麗で、素敵で。しかも、仕事が出来ちゃう。私の目標。
未来さんのアシスタント。
浜園 優子〈ﾊﾏｿﾞﾉ ﾕｳｺ〉。私と同期。何でも話せる相談相手でもあり、大事な友達でもある。
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