37人が本棚に入れています
本棚に追加
回れ右すると、別の道を通って帰った。心臓がドキドキしていた。
――まちがいない。あの男だ。
いったいどうやって居所をつかんだのか、千雪にはまったくわからない。
マンションに帰り着くと、ドアをロックし、部屋に上がり込むと同時にその場にへたり込んでしまった。
心臓の動悸が激しいのは、五階まで一気に駆け上がったせいばかりではないだろう。
何度も深呼吸して落ち着こうとした。
そのとき、呼び鈴が鳴った。
千雪は飛び上がった。心臓が止まるかと思った。
――まさか、あの男が……。
千雪は身震いした。顔面が蒼白になり、立ち上がろうとして、一度転んだ。
這うようにして玄関ドアまでたどり着き、魚眼レンズから恐る恐る外をのぞいた……。
最初のコメントを投稿しよう!