天井の口

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「前にも言ったはずよ。もうわたしとは関わらないで」 「どうしてさ。おれはこんなにもおまえのことを気にかけているのに。出会ったときは、そんなじゃなかったじゃないか」  不覚だった。こんな男だとわかっていたら、心を許そうなどとは思わなかった。 「おれはおまえをあきらめない。聞いてくれ。おれは――」  千雪は通話を切った。これ以上、話したくはなかった。  先日、コンビニの前で見かけたのは、やはり見間違いではなかった。亀垣は、もうこの近くまで来ているのだ。レジデンス茜台を突き止めてしまうのも時間の問題だろう。  千雪の目は泳ぎ、足元がふらついた。精神に大きな打撃を受けて、血圧が上昇した。  急いで帰宅した。尾行(つけ)られていないか、暗がりのなかに潜んでいるんじゃないかと、恐怖が心を支配した。  501号室のドアを開けて、部屋で明かりも点けず、しばらくリビングのカーペットに倒れこんだ。
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