天井の眼

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 気にしすぎだ、と千雪も心でそう思い込もうとするのだが、感じる視線は日に日に強くなり、リビングにいると落ち着かないほどだった。  それだけではない。  ある朝、シミを見ると、二つ並んだソフトボール大の「両眼」の脇に、五〇センチぐらいの細長いシミがすっと一本入っていて、それはまるで「口」のようだった。  巨大な顔となって、リビングを見下ろすシミ。  千雪は自分の精神が壊れてしまうのではないかと本気で思った。  そんななか、さらに追い打ちをかけるように、恐れていたことが現実となってしまった。  駅から帰る途中のことだった。千雪が速足で歩いていると、どこか不気味なオーラを感じる人影を発見した。それはコンビニの前でたばこを吸っていた。周囲はすでに暗く、遠くから顔を判別することは難しかった。  だが、千雪の足は止まった。  このままコンビニの前を通り過ぎるのはマズイ。
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