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-first chapter -
…………その夢を見て目覚める朝は、いつも汗だく。身体がだるい。
泣き濡れた瞳を拭うと、僕は身体を起こした。
……裸足でフローリングをペタペタと歩いて廊下に出ると、洗面所で顔を洗う。
紅くなった瞳を誤魔化す為に。
………うちの両親は、僕に異常な程過保護だ。
"理由"は、わからない…。
だって。僕には、約半年前からの記憶が無いから………。
一度、両親に聞こうとした事はあったけど、その話をした途端。両親の顔は曇った。
それで。僕は、両親から以前の僕の事を聞くのを諦めた。
だって、あまりにもつらそうだったから……。
"思い出したい。"と、思ったきっかけは毎晩見る夢。
……太陽に光る眩しい金髪。
強面なのに、人の良さそうに笑うその人に。僕の心は切なく軋んだ。
………僕は、君を知らない。
そう、思い出せないんだ。
けど、起きた後。
……残る感情は、焦燥感で。
いつだって、いつだって。ぼやけた視界の向こうの人物に、気付いて欲しくて。……こみ上げる感情で身を焦がしながら叫ぶんだ。
僕は君がわからないけど。
…僕は……、君を知りたい。
……君を思い出そうとすると、胸が潰れるかと思うほど苦しくなるけど。
君の夢を見れない日の僕は、驚くほどがらっぽだから……。
………笑っちゃうでしょ?
夢の人物にこんなに夢中になって。
けど、会いたいんだよ……。
子供のように笑う、あの人に。
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