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「……えっ、由宇大丈夫かよ?」
……驚いた木崎が、僕が落とした鞄を拾い上げた。
「…っ、う、うん。大丈夫だよ?大丈夫。」
その日以来、見るあの夢…。
脳裏をかすめる金髪が光をはじくたびに、温かいのに、切なくて、苦しくて。
けれど、願ってしまうんだ。
夢でもいいから、もう一度会いたい…と。
「…由宇、そんなに怖かったのか?……俺が守るから。だから、心配すんな。」
勘違いだよ?木崎。
あんなに、優しい目をした人が怖い人な訳がない。
けど、あの人の事を考えると。足がすくんでしまう。
…心がぎゅっと苦しくなる。
けど、そんな感情をとっぱらってしまったら。
僕の中には、何も残らない。
……そんな気がした。
学校について、教科書をバサリとおく。
ため息をついて、外を眺める……。
なんでだかなんて、分からない。……けど、もう一度会いたいって思ってる。
きっと、これは。
前の僕の感情だ。
なんでこんなにも胸が苦しくなるのか、僕は知りたい。
……だって、それがなければ空っぽになっちゃうくらいの感情が持てるのって素敵な事でしょう?
僕は前の僕の事が、知りたい。
この時は本気で、そう思ったんだ。………その傷の深さも知らずに。
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