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「だあ、食った食った。かっちゃん、ごちそうさん」 コクッと頷く嘉寿男に礼を言い、男達はバラバラと歩いて帰っていった。 「かっちゃん、ごちそうさん。今日も旨かった」 炊事場で洗い物をしている嘉寿男に健が声をかけた。 「あ…りがと」 「手伝ってやるよ。一緒に帰ろ」 吊るしてあった、少々年期が入ってくたびれたフキンをはずし、健は鍋を拭きはじめた。 「そういや、最近見ないけど?あの軽の四駆の車…」 「あれ…おっちゃんに貸した…おっちゃんのが事故って…猟で山道走るのに…軽トラじゃパワー不足…らしいから。今、新しいの探してる」 「ふーん。事故で怪我したそうでもねえなら、まあ良かったな。良かったっつうのも変か?」 昔から変わらず、屈託のない明るい笑顔を嘉寿男に向ける。 健は嘉寿男にとっては憧れの…それ以上の存在で… 「よしっ。終わりっと。あと持って帰るのか?」 「明日…取りに来る。て…手伝ってくれて…ありがと」 眩しすぎる存在だ。 数日後――― 「嘉寿男!いるか?」 朝早くから嘉寿男の家に正男がやってきた。 「車、見つかったか?」 ズカズカと中に入り、弟である嘉寿男の父に軽く挨拶する。 「前のと同じのだろ?あれは生産終了したからなあ」 「誰も新車でなんか言ってねえ。セコでええ。ぼろくったって走りゃかまわん。嘉寿男に探せって言ってあるんだ」 イライラと怒鳴るように弟に返し、正男は荒々しく胡座をかいて座るとタバコを取り出し吸い始めた。 嘉寿男の父は昨年倒れ、後遺症から手足に麻痺が残り、今は嘉寿男一人で他に従業員もいない鈑金会社をきりもりしている。
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