それゆえ僕らは奴隷と化す。

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚ 「……で、額田先生が言ってたのって、何だったの?」  校門を出たところで、陽香がぽつんと口にする。  通りに夕陽の真っ赤な光が射し込んで、まぶしい。それを直視できずに目を細めながら、俺は呆れて陽香を見下ろした。 「よからぬ言葉と判ってて、訊く?」  俺が少しだけ声のトーンを落としたことに、陽香の瞳がうろたえたように動く。  陽香は下唇を噛み締めて、軽く眉間に皴を寄せた。明らかに、好奇心と慎みの間で迷っていた。  ……その表情に妙な胸騒ぎを感じて、俺はこっそりと溜め息をつく。  うん、今のはただ考え込んでいるだけで──陽香に他意はない。  それは、いやと言うほど判っている。完全に、受け取る俺の問題……なんだけど。  何も今、そんなこと気付かなくたっていいじゃないか。 「だって、仁志くんがさっき、自分に訊くよう諭せって、額田先生に……」 「……そうだね」  どうしても好奇心が抑えられない様子の陽香を見て、諦めの息を漏らす。  うん。陽香は、何も悪くない。  こんなの、女の子に判るわけがないんだから。  女の子の困っている顔は、感じてるのを我慢してるときの顔とすごくよく似てる──とか。 .
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