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やだ。
恥ずかしい。
今すぐここから、消えてなくなってしまいたい。
無意識にいやいやを繰り返していると、仁志くんに口唇を軽く咬まれた。
びりりと痺れるような快感が、欲しがるその場所までじんわり突き抜ける。
「陽香」
「は、い……」
耳元で低くささやかれ、背中を快感が突き抜ける。でも、これでは足りない。
もっと、もっと。恥ずかしいくらい、言葉にならない思惑が身体の中を欲望と一緒にのたうち回る。
「俺で塞ぐよ。いい?」
そう訊かれて、ようやく救われるような気がした。熱っぽい仁志くんの瞳が揺れている。
いつも冷静にじっと見つめてくるアンバーの瞳に、余裕がない。
それは、あたしのせい……?
「おね、がい……」
意図通りのことを言えたかどうか、判らない。
激しい渇きと、羞恥心と、緊張と。
それらがないまぜになってあたしの中を満たしてくるから、いつもの自分なんてその余りほどでしかいられなくて。
どうすればこの疼きが治まるのか、知っているけど──判らない。
自家撞着に陥りながらやっぱりどうしたらいいか判らなくて、仁志くんのやわらかい髪をねだるように掴んだ。
すると仁志くんは一瞬すべてを諦めてしまったかのような目をして、あたしにのしかかる。
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