それは君のことだと、何度でも。

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   陽香が羞恥心にがんじがらめにされて動けなくなっているのをいいことに、彼女にまとったTシャツを暗がりの中たくし上げる。  この薄暗い中でも判る、白くなめらかな肌。それにやけに感動してしまう。  陽香の両腕を頭の上に放り出させてTシャツをぜんぶ脱がせてしまうと、彼女の身体が心もとなく震えた。 「寒い?」  んん……とわずかに声を漏らしながら、陽香はかぶりを振った。  呼吸が乱れているのはキスだけじゃなく、緊張のせいもあるだろうと思う。 「だいじょうぶ……」  陽香の両腕を、あえて押さえつけた。  もう、ここから先はきみの都合なんて聞かないよ、という意味で。  今さらそんなことを確認する必要はないけど、不快でないことと、心地いいことと──気持ちがいいこと。  ぜんぶ、違うはずだろう。  心の中だけで問いかけた。 「や……」  無意識に漏らされているのであろう陽香の声。  や、なんて口では言いながら、無抵抗。  ……初めてのくせにそんな誘い方、狡いよ。  陽香の形ばかりの拒否に、だんだん自分の心臓が重く疼き出すのが判った。 .
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