それは君のことだと、何度でも。

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  「──……!」  陽香の耳元に口唇を寄せクス、と笑うと、細い肩が小さく震えている。 「……何か違うこと考えたり、言ったりしててもいいよ」 「え……」 「緊張しすぎて、気絶でもされたら困る」  陽香の目を覗き込むと、かわいそうなくらい潤んでいた。  その目元に口唇を寄せて、流れ落ちそうな涙を舌ですくい取る。 「あの……じゃあ……」 「うん」  陽香が一生懸命逃避を始めたのをいいことに、動作を進めた。  ビクッと反応しつつ、陽香は俺の肩にしがみついて話し始める。 「あたし、本、読むの好きで……こういう場面、何度も読んだんだけど」  平静を装いたいんだろうけど、抱いた身体はさっきよりあったかいし、何より声が……ああ、この声で我を忘れるほど啼いて欲しい。  早く。 「読むのと実践とでは、違うんじゃない」  Tシャツを脱いで放り投げた。  もう一度素肌で抱きしめると、陽香の胸が俺の胸板でやわらかく潰れる。弾力をそのままに。  素肌で抱き合うことは、すごく幸せなことなんだと判ってもらえれば、あとは楽だ。 .
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