それは君のことだと、何度でも。

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  「うん……でも、書いて、あった。初めて男の人にこういうこと、されるとき……まな板の上の鯉みたいな気分になるんだ、って……あ」  話に夢中になろうとする陽香の邪魔をするように、合わせるように閉じられた膝の内側に手を滑らせ、やんわり割った。 「……気分はどう?」 「……判らない……」  ことを進める程に、眩暈が襲う。俺が、陽香に少しずつ侵食していくようで。  ……この行為って、こんなふうに相手に混ざれるものだったっけ。  まだ、繋がってなどいないのに。自分が陽香の中に堕ちていくのを感じながら、俺の中にもまた陽香が入ってくるのを感じていた。  すきで、しかたない、と。  声にも言葉にもならない陽香の想いが、黙っていても伝わる。  その純粋な想いの中でひっそり芽生えた、まだ見ぬ彼女の存在さえも。  引き出したい。  そのままでいて欲しい。  ──けど、やっぱり欲しい。  こうした矛盾を、幾度身体の中で行き来させただろう。  でも、もう考えたくない──考えない。 .
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