242人が本棚に入れています
本棚に追加
「うん……でも、書いて、あった。初めて男の人にこういうこと、されるとき……まな板の上の鯉みたいな気分になるんだ、って……あ」
話に夢中になろうとする陽香の邪魔をするように、合わせるように閉じられた膝の内側に手を滑らせ、やんわり割った。
「……気分はどう?」
「……判らない……」
ことを進める程に、眩暈が襲う。俺が、陽香に少しずつ侵食していくようで。
……この行為って、こんなふうに相手に混ざれるものだったっけ。
まだ、繋がってなどいないのに。自分が陽香の中に堕ちていくのを感じながら、俺の中にもまた陽香が入ってくるのを感じていた。
すきで、しかたない、と。
声にも言葉にもならない陽香の想いが、黙っていても伝わる。
その純粋な想いの中でひっそり芽生えた、まだ見ぬ彼女の存在さえも。
引き出したい。
そのままでいて欲しい。
──けど、やっぱり欲しい。
こうした矛盾を、幾度身体の中で行き来させただろう。
でも、もう考えたくない──考えない。
.
最初のコメントを投稿しよう!