それは君のことだと、何度でも。

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   陽香には俺のTシャツを渡したし、バスルームの中の小物の配置もざっと教えたから、不都合はないはずだ。  しばらくは何やら躊躇って色々ごそごそしていたようだけど、やがてシャワーの音が聞こえてきて、とりあえずほっと息をついた。  ……初めてじゃあるまいし落ち着けよ、俺も。  びしょ濡れの頭にタオルを乗せて、途方に暮れる。  冷えた身体の奥底に燻る熱は、さっき陽香に点けられたもの。  一向に治まる気配のないそれに侵されながら、窓の外の景色を眺める。  しばらくそのままぼーっと外の景色を眺めていると、陽香が出てきた。  俺のTシャツを着て恥ずかしそうに陽香が佇んでいる。  恋人が、自分の服を着て無防備に立ってるだけの姿がこんなにいいものだとは思わなくて、感動してしまう。  俺がもし中学生だったら、これを見た時点でもう1人で先に勝手に終わってしまったかも、とか。  中学生だったらこの姿のよさがたぶん本当には判らないだろう、とか。  頭の悪そうなことをしこたま考えて、自分が惚けていることに気付き慌てて顎を引いた。 「大丈夫? 寒くない」 .
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