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「あー、ね。これじゃ俺の友達自慢だな」
「聞きたくないよ。人にも言うなよ、そんな恥ずかしいこと」
「ごめん、あちこちでもう言ったかも」
……何だか一瞬ものすごい勢いでわき上がってきたものをつい堪え切れなくて、斉木の座っている椅子の脚に思い切り蹴りを入れてやった。
椅子の滑り止めが下のタイルと擦れて、ごごごご……とものすごい音が響く。
一瞬でテラス中の注目を集めた斉木は、たはは、と笑うだけでごまかした。
「ひどいわ、仁志ちゃん。タイルが泣くわよ」
「……」
「悪かったって」
懲りていない感じでニヤニヤと笑いながら、斉木は椅子が動いたぶんまた戻ってきた。
「いや、でも、いいんじゃないの。ときどきふっと我に返って、怖くなるくらいハマるって」
「……たまにドキッとするようなこと言うよな」
「俺の師匠は、仁志だから。お前見てると、ドキッとすることが多いのは、こっち」
斉木は、俺の顔を見て──やけに大人っぽく笑った。
「仁志をずっと見てると、情緒、って言葉の意味とか辞書で引きたくなるもん」
「……そこは、普通に思い出せよ。だから脳みそザルなんだよ、お前」
なんて答えたらいいか判らなくて、またそういう言い方をしてしまう。
斉木は気にすることなく、「そうだよなー」と、けらけら笑ってくれた。
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