それは悪戯が過ぎる。

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚ 「……仁志くん、訊いてもいい?」  午後になって、陽香が遊びに来た。  週末には来てもいいよ、という話をしていたせいか、朝いちで(と言っても寝坊したらしく11時頃)陽香から“行ってもいい?”というメールが来ていたから、ふたつ返事でOKした。  ……というか。流華さんと別れたあと、なんだか気分的にすごく疲れて──顔が見たいと思っていたから、メールがなければ俺から連絡を入れていたと思う。  すっかりおなじみになった、彼女用に買って置いてある紅茶の入ったグラスを意味もなく揺らしながら、陽香は床のフローリングをじっと見つめた。  まあ、たぶん言いにくいことなんだろう。  昨日は俺がバイト中だったし、佐久間達もいたし──。 「あのね、すっごくつまらない、小さいことなの」 「うん?」 「怒らない?」 「うん、聞いてみないと判らないけど──たぶん、怒らない」  怒られるようなことと言っても、陽香から出てくる言葉なら知れている……と思う。  別に彼女を侮っているわけじゃない。故意に人を怒らせる術というのを、この娘は基本的に知らない。  陽香はグラスを持つ手に力をこめると、膝の上で落ち着かせた。 .
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