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仁志くんとお姉さんのやりとりを聞きながら、あたしは深めの緑色の風鈴を覗き込む。
可愛いぶどうの絵が入れてあって、一瞬で目を奪われてしまった。
思わず思い浮かべたのは、仁志くんの部屋のカーテン。
フォレストグリーンのカーテンとこの風鈴の緑が、よく合うんじゃないかなあ、なんて勝手に思ってしまった。
でも、あたしの部屋じゃないし……。
綺麗な風鈴を眺めていると、仁志くんの声が落ちてきた。
「……陽香、欲しいの?」
「え?」
欲しい、と言いかけて──言葉が止まる。
口唇を尖らせて、うんうんと悩んでしまう。
あたしがハッキリと返事をしないものだから、仁志くんは近くのガードレールに軽くもたれた。
……よし。
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