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「……すごい。虹だ」
仁志くんの言葉に、お姉さんはうちわを動かす手を止めた。
お姉さんはゆっくりと立ち上がると、腰を下ろしていた椅子にうちわを置く。
「お兄さん、判ってくれた。嬉しー」
言いながらお姉さんはあたしにもニコッと笑った。
そう、風鈴の並べ方がすごく綺麗なんだ。
棚の中は左から右に向かって赤、橙、黄、緑、青、藍、紫……といったふうに風鈴の色別に数個ずつ並べられている。
虹だったんだ。どうりで目を奪われるわけだ。
「この色の並びは、日本独特のものだから。すごく馴染みのある並びでしょ」
「日本の?」
お姉さんが話し出したことに、思わず食いついてしまった。
あたしに聞く気があるのだと判るや否や、お姉さんは更に身を乗り出す。
「虹が7色っていうのは、日本とかアメリカとか、そのへんの話なの。国によっては5色とか3色とか……1色だ、って国もあるんですって」
「え? 世界中みんな同じじゃないの?」
「認識できる色は、国の文化によって違うの。赤と黒の2色に見える国もあるそうよ」
「うそー。黄色とか緑、どこに行ったんだろう」
「そういえば、外国の人は紺と藍の区別がつかないって話、聞いたことが」
仁志くんが思い出したように口を挟むと、お姉さんはうんうんと頷いた。
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