なつのおと

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  「日本は四季折々の景色があるから、昔から色彩豊かな国なんだよね。視力とは違うけど、日本人は特にそういう方面に目のいい人種なんじゃないかなあ、と思って。それで、虹の並びにしてみてるの」 「へえ……」  2人で近付いて、風鈴の柄を確かめる。  透明な風鈴の側面3分の1程に色が塗ってあって、その反対側にアサガオや金魚、ホタルなどが描かれていた。  色だけでなく、絵柄でも並びを分けているようだった。なかなか凝っている。  よく見ると、どの風鈴にも同じフレーズが小さく入れられていた。 “no rain,no rainbow”  どういう意味だっけ、と考え始めると、仁志くんも一緒になって覗き込んできた。 「“雨が降らなければ虹は見られない”──ハワイのことわざだったかな」 「お兄さん、すごい。ご名答! よく知ってるね」 「何かのドキュメンタリーで見たんですよ」 「どういう意味なの? 雨が降らなきゃ虹が出ないよ、ってこと?」 「うん、そう」  仁志くんは慎重な手つきで紫の風鈴を覗き込み、そのフレーズを確かめながら続ける。 「“悪いことのあとには、きっといいことがある”っていう意味。おしゃれですね」 「ウチの工房で作ってるの。梅雨明けたからね。今日は、出張販売」 .
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