231人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「日本は四季折々の景色があるから、昔から色彩豊かな国なんだよね。視力とは違うけど、日本人は特にそういう方面に目のいい人種なんじゃないかなあ、と思って。それで、虹の並びにしてみてるの」
「へえ……」
2人で近付いて、風鈴の柄を確かめる。
透明な風鈴の側面3分の1程に色が塗ってあって、その反対側にアサガオや金魚、ホタルなどが描かれていた。
色だけでなく、絵柄でも並びを分けているようだった。なかなか凝っている。
よく見ると、どの風鈴にも同じフレーズが小さく入れられていた。
“no rain,no rainbow”
どういう意味だっけ、と考え始めると、仁志くんも一緒になって覗き込んできた。
「“雨が降らなければ虹は見られない”──ハワイのことわざだったかな」
「お兄さん、すごい。ご名答! よく知ってるね」
「何かのドキュメンタリーで見たんですよ」
「どういう意味なの? 雨が降らなきゃ虹が出ないよ、ってこと?」
「うん、そう」
仁志くんは慎重な手つきで紫の風鈴を覗き込み、そのフレーズを確かめながら続ける。
「“悪いことのあとには、きっといいことがある”っていう意味。おしゃれですね」
「ウチの工房で作ってるの。梅雨明けたからね。今日は、出張販売」
.
最初のコメントを投稿しよう!