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「俺の部屋に置きたかったなら、そう言えばよかったのに」
くすくすと笑いながら、仁志くんはカーテンレールに風鈴を取り付けた。
いつも窓は左側しか開けないから、少し右寄りに。
「だって、あたしの部屋じゃないし……思いついたものの、図々しいような気がして」
「別にいいよ、これくらい。ただ、外に下げると“夜はうるさい”ってご近所に言われるかも知れないから、ここになっちゃうけど」
それでも、引かれたカーテンの傍に下げられた風鈴はやっぱりこの部屋に馴染んで映えた。
風鈴を吊るす紐が安定したのを確認してから、仁志くんは内側に中身の金具を引っ掛ける。
彼が指先でとん、と風鈴を突くとチリン……と涼しげな音が鳴った。
「どう? これで」
「うん、ありがとう! 可愛い」
カラカラ……と仁志くんが窓を開けると、ひゅうっといい風が入ってきて、自然に風鈴が鳴った。
その軽やかないい音に耳を澄ませていると、仁志くんは風鈴の入っていた箱を潰しながらすっかり暗くなった夜空を見上げた。
風鈴のことがなければ、仁志くんはごはんを済ませたらあたしをそのまま送ってくれるつもりだったらしい。
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