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口唇と口唇が触れて、合わさって、混ざり合いたいって言ってるみたいだ。
ふわふわと交わされるキスなのに、自分自身まで溶けてしまいそう。
「……なんて顔してるの。そんなに気持ちいい?」
ふっと口唇を離されて、目を開けると仁志くんがとろんとした目であたしを見下ろしていた。
恥ずかしいなんて感覚までとろかされてしまったのか、あたしは躊躇うことなくうん、と頷く。
「時間、ないって言ってるのに」
「あ……」
眉根を寄せて何かに耐えるようにしながらも、仁志くんはその場にあたしを横たえさせようとする。
「ごめん。ちょっと……我慢、できない」
苦しげに呟いたその言葉はまったく別物のはずなのに、 “好きだ”って言われたみたい、と思った。
時計を見上げる気なんて、さらさらない。
逆らわないあたしに溜め息をつくと、仁志くんはずりずりと身体を押し付けてくる。
窓際から離れようとしていることに気付いて、あたしも後退した。
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