その眩暈さえ心地いい。

2/32
前へ
/32ページ
次へ
   陽香を家まで送り届けたあと、再び部屋に戻ってきた俺は、ずるずると座り込んだ。  身体は確かに、疲れ切っていた。  2つめのバイト初日、ということもあったけど、とにかく暑かったし。  それでも陽香の顔を見たら、そういう疲れが全部吹っ飛んで──下半身がやたらスッキリしている今の状態に至る。  男は疲れたときほどやりたくなる、という話はたぶん本当だ。  陽香に足の間に来るよう言ったときは、本当にそんなつもりじゃなかった。  鼻先に陽香の髪の匂いがかすめて、癒される……なんてうっかりそこに顔を埋めてしまったら、止まらなかった。  昔から、“お前は枯れてる”と斉木に何度も冗談で言われるくらい、淡白な方だったはずなのに。  今になって、年相応とか……。  肩から背中にはずっしりと疲労がのしかかっているけど、腰から下はすかすかに軽い。  そのままもそもそとベッドまで這って行って、シーツを引き寄せる。  陽香の色んな匂いが残っていて、それだけでまだムラムラときそうだった。 「……バカ。これじゃ、ただの変態だ」  自嘲しながら、億劫だけど立ち上がる。  寝るにしても、シャワーくらい浴びないと。  とりあえず陽香に“ただいま”とメールをして、浴室に向かった。 .
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

244人が本棚に入れています
本棚に追加