その眩暈さえ心地いい。

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚  ……考えてみれば、俺だってそうだ。  一番引きずったのはやっぱり最初のさなえさんのことだけど。  恋をしているときに、恋の終わりを意識することなんてできやしない。  その恋に溺れていれば、溺れている程。  さっき陣さんはそれらしいことを何も言わなかったけど、残念ながら俺は愛美さんの口から聞いて、全部知っている。  愛美さんは陣さんを利用してしまった、と馬鹿正直に俺に告白したから。  それがどういう意味か判らない程、頭の中めでたくはない。  愛美さんと陣さんの関係など、知るものか。  それは、すっかり愛美さんへの気持ちが風化してしまった今でも、あまり知りたいことじゃない。  だけど、知ってしまったことを忘れることなんて、なかなかできやしない。  陣さんがしつこく忘れられないでいるのは、忘れられない苦しみとか痛みの中に、甘い棘が残っているからなんだろう。  と、そこまで考えてから。  掘り下げなくていいことにまで気付いてしまって、俺は苦笑した。  大輔さんが俺を見て言った、「翠川が可愛がってた」という言葉はなかなか的を得ているんじゃないだろうか。 .
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