その眩暈さえ心地いい。

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  「いや、寂しいけど、それは別にいいの。会社はめぐみちゃんの世界のメインなんだから。そこで働いてる人達と仲良くするのは一番大事だろ。俺、その妨げにはなりたくない」 「まあ、そうだよな。お前のそういうところは、えらいよ」 「……ありがとう、坂田。今夜俺のこと抱いてもいいよ」 「とりあえず、お逝きになってもらえる。気持ち悪い」 「いやいや。んでね、俺が横にいるとき、めぐみちゃん頑張って先輩達に言ったんだよ。下着盗られたりすること」 「助けてくれるって?」 「うん。もう、めぐみちゃんがいい子だって判ってくれたからお姉さん方、マジで憤慨してくれてさ。お局さん達も交えて、防衛ラインができそうなくらい」  相槌を打ちながらビーフジャーキーをかじって、口に含んだ。  ビールの苦味とうまく絡んで、溜め息が出そうなくらいうまい。  安い酒と安いあてで満足できる、そういう年頃でよかったと思ってしまう。 「……したら今朝さ、めぐみちゃんの部屋の前に、ゴムばらまかれてたって」 「は?」 「未使用だけど、ひと箱分まるまる。ぜんぶ袋から出して、ご丁寧に全部広げてあったって」 .
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