その眩暈さえ心地いい。

7/32
前へ
/32ページ
次へ
  「それ、夜中のうちにやられたってこと?」 「うん。それ見た瞬間めぐみちゃんその場で泣き崩れて、今日1日部屋から出られなくなって。今日は独身のお局さんも一緒に有休とって、一緒にいてくれたんだ。でも、ずっとってわけにいかないから、明日は頑張って出社するって言ってたけど……」 「生理的に、イタズラの域超えてるだろそれ。気持ち悪かっただろうな……」 「うん。どう考えても、男子社員の誰かだって。一応、男は女子寮への立ち入りは禁止ってことになってるけど、夜には管理人さん帰っちゃうし、ランドリー通れば行き来はできるんだって」 「警備体制はないんだ。ザルだな」  斉木は悔しそうに口唇を噛みしめる。 「お姉さんとお局さんは、何としても犯人見つけるって言ってくれたんだけど。ひょっとして、そこまでされたのって俺のせいかな、とか思って……そしたらなんか、へこんでさ」 「……お前がいつも送り迎えするから、相手を刺激したかも、ってことか?」  黙って頷くと、斉木は缶の中のビールを一気に飲み干し、手の中でグシャッと握り潰した。 「マンションとかアパートなら、俺、ついててやれるのに。会社の寮なんて、俺、何もできないし。けど、めぐみちゃんその会社で働いてるし。仕事自体はやっと楽しくなってきたかも、って」 .
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

244人が本棚に入れています
本棚に追加