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あたしの多めの髪をすっかりまとめてしまった亜由子さんは、ふうと溜め息をついた。
「うん、完璧! これなら多少のことがあっても崩れへんから」
「すごい……ありがとうございます、亜由子さん……」
合わせ鏡で後ろまでちゃんとチェックさせてもらいながら、あたしは感嘆の声を上げる。
亜由子さんが髪の毛をいじっているところを見ていたはずなのに、何をどうしてまとめられていったのか、よく判らない状態だった。
そして、両サイドの襟足から後れ毛のようにひとふさずつ垂らされた髪をあえて胸元に流してあって……自分で言うのもなんだけど、とってもいい感じ。
でも、襟足を出すことに慣れてないから、それだけで首がスースーして変な感じというか、心もとないというか……恥ずかしくて、思わず俯いてしまう。
「あ、そうそう。そんな感じで歩いたらめっちゃ可愛いと思うわ」
無意識のあたしの動作を見ながら、亜由子さんがやけに嬉しそうにうんうんと頷いた。
「え?」
「そのな、恥ずかしそうにしてる感じがええねん。あたしが彼氏やったら、メロメロになるわ~」
「なに。気になる。俺も見てええか」
パーテーションの向こうで、雅也さんが焦ったような声を出す。
すると亜由子さんがそこから顔を覗かせ、ピシャリと「アカン!」と言い放った。
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