229人が本棚に入れています
本棚に追加
「ええ、何でや。もう着せたったんやろ?」
「アカンアカン。可愛過ぎるねんアカン。それに、陽香ちゃんだって一番最初はこんなオッサンやなしに彼氏に見て欲しいやんなあ?」
オッサン、って……。
そりゃあ、須藤さんに見てもらって、褒めてもらったりしたらきっと、すごく嬉しいけど。
でも、どうして浴衣を着てみたいって思ったか、って言ったら……。
亜由子さんの言葉に俯きながらもなんとか頷いてみせると、彼女は楽しそうに笑った。
「ええ。そんなら俺、どうやって運転すんねん。お前が俺に送ったってって言うたんやろ?」
「あ、アカン。せやったな、どないしよ……」
すると、美園さんが面倒そうに息をついた。
「……もう、いくら亜由子と先生が騒いだところで、陽香ちゃんはあなた達のものじゃないんだから」
「……言われたらそうやな」
須藤さんと亜由子さんがほぼ同時にうなだれたときのような声を出すものだから、あたしはその場で吹き出してしまった。
亜由子さんは苦笑しながらあたしの襟元までをちゃんとチェックしてくれる。そうしながら、口を開いた。
「陽香ちゃん。好きな人ができたらなんで女の子が綺麗になるか、判る?」
「え?」
.
最初のコメントを投稿しよう!