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「こんばんは、坂田くん。……彼女が?」
「こんばんは、西川さん。そうだよ。俺の」
俺の彼女、という言葉を本能的に途中で切ってしまった。
あざとかったかな、と思ったけど、西川さんはまったく気にしていない様子で陽香をきらきらした瞳で見つめている。
この子がこんなに明るい目をするのも、珍しい。
「はじめまして、私、西川めぐみといいます」
「あ、はい……織部陽香です。はじめまして……!」
「めぐみちゃんね、俺の……カノジョ! ちょろしくね、陽香ちゃん」
「お前、何噛んでるの。ちょろしくって何だよ」
斉木の思わぬファインプレーに吹き出すと、やつは顔を押さえてきゃああ、と声を上げながら西川さんの後ろに隠れようとする。
「小さい女の子の後ろに、でかいお前が隠れるなよ。全部見えてるんだよ」
「いやよ、チラリズムが大事なのよ」
「チラリズムどころか丸見えだってば。それより何、ちょろしくって」
「か、カノジョって言うのに照れたんだよ! やったあ、カノジョって言ってやった! って思った瞬間頭の中真っ白になって……ああ、今俺の口のところに絶対、小さい変なオッサンがいた。邪魔されたんだ俺」
どうでもいいって、と笑いながら、俺たちは歩き出した。
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