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浅海先輩の出店に足を向けると、また違う女の子が彼の隣を陣取っていた。
わりと綺麗な子だったけど、隣にどんな美人がいようと眉ひとつ動かさない浅海先輩。
こういう人が自我さえかなぐり捨てて向かう女の子、というのに少し興味はある。
まあ、それが今浅海先輩の隣にいる女の子ではないのは確かだけど。
だってその子は、どうやらあまり相手にされていないようだったから。
不満が顔に出ている。
その女の子は、浅海先輩の腕にまとわりつきながら、俺を睨みつけるように見上げてきていた。
その理由が判らなくて、首を傾げつつ浅海先輩に視線を戻す。
浅海先輩がニヤニヤ笑いながら陽香を見るから、先輩だということは承知の上で、彼の頭についていたお面を剥ぎ取り足元にベシンと落としてやった。
けど浅海先輩はまったく気にしてない様子で、イラつく俺を見て、ケラケラと笑ってた。
斉木が意地になってポイを10枚無駄にしたところで金魚すくいの出店をあとにしたんだけど。
さっきの女の子に睨まれた理由がよく判らなくて、なんだったんだろう、なんて考えながら歩いていたら、ふと思い出した。
……前に、告白されそうな空気を察知して、黙ってもらった子だ。
しっかり浴衣を着ている陽香を連れているのを見たら、そりゃ気分が悪いだろう。
不可抗力だし、その女の子はこれまた勝手なことに浅海先輩にくっついていたし、俺が気まずい思いをすることはないんだけど。
……普通に生きてるだけなのに、めんどくさいな、そういうのって。
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