そんなに頑張らないで。

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚  陽香の手を引いて歩きながら、熱気漂う人ごみを歩く。  ちらりと斉木を見ると、西川さんを半ば抱きかかえるようにして歩きづらそうにしている。  俺と陽香以上に身長差があるせいか、大変そうだ。  さらさらと流れていく風だけが救いで、これがなければ夜でも熱中症を起こしかねないんじゃないだろうか、と思った。 「ねえ、仁志くん」 「うん?」 「さっきの……仁志くんの先輩? 黒髪の、背の高そうな人」 「うん、浅海先輩」  陽香の手を握り直しながら、人の流れの止まったのに従って、立ち止まる。 「どういう人なの?」 「どういう人って、見たまま、ああいう人だよ」  不思議に思って顔を傾けると、陽香は考え深げに少し瞳を伏せた。  陽香が興味を持つような人だったかな……と首を傾げると、彼女はふと顔を上げる。 「……ううん、何となくなんだけど、言っていい?」 「いいよ、どうしたの」  横で斉木が、しきりに西川さんに「暑くない?」とか「大丈夫?」と訊いている。  案外まめなやつだったんだな、と思いながら、俺は改めて陽香に集中した。 「なんか、雰囲気は全然違うのに、仁志くんに似てたなあ……って、思って」 「え!? どこが!?」  心の底から驚いてそう訊くと、陽香も驚いた顔をする。  どこが──と訊きながら、自分でも初対面のときから心の中だけでそう感じる部分があっただけに、戸惑いが先にきた。 「いや、あの……ほんとに、直感っていうか、何となくなの。類は友を呼ぶっていうのかな」 「……ひどいなあ、俺、あんなに女の子をはべらせたことないんだけど」 「だから、そういうのとは違って……あの、仲良さげだったから言ったんだけど……嫌だった……?」  慌て始めた陽香の顔を見て、思わず笑いが漏れた。 .
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