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……何歳くらいなんだろう。
すごく大人の人だけど、髪の毛は鮮やかな金色。
須藤さんは陽香の肩を軽く抱くと、面白そうに俺を見た。
何となくその手が気に入らなくて、彼の瞳を見つめ返す。
「“桜月”か。読んだんは、ハードカバーの方か?」
「……そうですけど」
陽香の肩を抱く手が気に入らないということを明らかに察知しているはずの須藤さんの瞳に、にわかに苛立った。
須藤さんは小さい子にそうするように陽香の両肩を掴むと、ずずいと俺の前に差し出す。
「あの表紙のヒロイン、めっちゃ可愛いやろ。君、見る目あるわ。モデル、この娘なんやで」
「……え」
「須藤さんっ! 何で今それ言うの!?」
慌てて手を振り払う陽香を見て、須藤さんはケラケラと笑い出した。
「……え。でも、あれ、かなり前の本じゃ……」
「陽香ちゃんの髪型、基本的にずっと変わってないんや。読んだんやったら判るやろ。ヒロイン、ラストはめっちゃええ女になるやん、あれ。自立のできる女になって欲しい、っていう兄心」
「そうなんですか……」
やたらじっと陽香を見てしまう。
すると、陽香は小さく唸りながら一歩後ろに下がった。
「マサ、えらい暴露したな」
車にもたれたまま、関口さんがクスクスと笑う。
「坂田くんやったか。まあ、しっかり陽香ちゃんエスコートしてきてな。大事な女の子やから、くれぐれも頼むわ」
須藤さんにポン、と肩を叩かれた。
軽く見えただろうけど、その“ポン”に重く力がかかっていたことは、俺しか判らないと思う。
……ちょっと、痛かったし……。
「は、はい……陽香をここまで送っていただいて、ありがとうございました……」
「じゃあ、よろしくね」
美園さんも朗らかな笑顔を浮かべ、3人とも車に乗り込んでいく。
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