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お互いを見て、お互い優しくして、お互い寄り添って。
理想の恋愛、なんて大それたものを掲げてきたわけじゃないけど、それでも“こうだったらいいな”的なことは、誰しも持っているはずで。
優しくしたいのとは別のところで、どうしても相手を独占していたいっていう強い欲望があって。
でも、自分から出てきた感情には違いなくて──。
「……そっか、だから恋愛って、心が揺れるんだ」
「……お。さすが作家の妹」
「そんなんじゃないよ……」
急に、不安を絡めた憂鬱が顔を覗かせる。
だって、収の言う通り、終わりがあって当然のことなんじゃないか、って気がしたからだ。
「お待たせしましたー!」
ぱたぱた、とちいちゃんが急いで教室から出てきた。
あたしは手にしていたままの携帯をじっと見る。
久しぶりに3人で顔を合わせたから、どこかでごはんでも食べよう……という話だったけど。
「ごめん、やっぱりあたし帰る」
「え? 陽香先輩、どうしたんですか?」
「知らない」
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