その階にうつるもの。

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  「大丈夫だよ。緊張してるから、痛くは……ないかな」  言いながら、思ったより深い自分の腕の傷を見た瞬間からずくずくと痛み出した。  血で汚れていない方の手で慎重に西川さんの手を引いて立ち上がらせる。  そうしているうちに電話が繋がり、訊かれるままにすべての詳細を伝えた。  巡回中のパトカーを手配したからそのまま犯人を押さえていて欲しいと言われ、パトカーが来るまで電話が繋がったまま待つことになった。  話を終えてから、えらく冷静に色々訊くものだな、と思った。  何があったのかとか、場所くらいは訊かなければならないだろうけど、こんなに話していると、間に合わなくなることさえあるんじゃないか、と思った。  仕方のないことなんだろうけど……。  中居を見下ろすと、斉木に押さえられたまま、ふーふーと毛の逆立った猫みたいに興奮状態のままだ。 「西川さんにずっと嫌がらせしてたの、この女だって」 「へ!?」  目を丸くして、斉木は俺と中居を何度も見比べた。  ……判って捕まえたんじゃないのか。そうかそうか。 「仁志が襲われてるから、咄嗟に……」  ポカーンとしながら、斉木は拘束している手に少し力を込めたようだった。 .
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