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「……まあ、今考えたら納得いくよな。下着はともかく部屋の前にコンドームバラまくとか、落書きとか。たぶん、男の思考じゃあまり出てこない嫌がらせだし……」
「……まあ、確かに。俺も、女々しいくそったれ、と思ってたし」
斉木の言葉に反応し、押さえつけられている中居がまだ暴れようともがく。
「うるさいわね! 男なんかに私の痛みが、判るわけないでしょう! この、けだものども!」
あまりの言いように、あっけに取られてしまう。
それは斉木も同じだったらしく、ポカンとして中居を見下ろしていた。
……男の人を憎んでいる女の人なのか……。
直感的にそう察して、俺は血の流れる自分の腕を見ながら溜め息をついた。
暑くて体温が高いせいで、本来の出血より少し派手なのかも知れない、と思った。
止血の助けになるかは微妙だけど、肩と肘の間を手で強めに押さえる。
携帯は肩と耳で挟んで──この体勢は、ちょっと辛いけど。
「まだかな、遅いな」
暴れようともがく女をひとりで押さえるのは大変そうで、斉木は何度も中居の腕を軽く捻る。
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