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追うのが遅れたせいで、斉木とあの女がどこに行ったのか判らなくなってしまった。
早鐘のような心臓が内側から胸を叩いて、息苦しいし痛い。
ぱらぱらと通り過ぎていく人が、俺の血まみれの腕を見てはぎょっとして立ち止まったり振り返ったりするけれど、それを気にする余裕はなかった。
そう長い距離を走ってきたわけでもないのに、緊張で息が切れる。
張り詰めた精神状態というのは、こんなに身体に負担をかけるものなのか。
自分で自分に対して何とか冷静を装いたくて、いつも無意識に分析するクセを手繰り寄せてはみたけど、目の裏側でずっと警鐘が鳴っているような焦燥は止まらない。
歯がゆい。何でこんなことになってしまったんだろうか。
斉木はこの数ヶ月ずっと西川さんを心配していて、なんとか状況を好転させようと、あいつなりに立ち回っていたのに。
進んで手を貸さなかったのは、斉木なら何とかできるだろう、と思っていたからだ。
あいつの底抜けの明るさとタフさを目の当たりにして、西川さんにちょっかいを出しているやつが目を覚ましてくれたらいいと──。
──俺がずっと、あいつにそうして支えられてきたように思い直してくれたらと、無意識にそう思っていたのに。
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