188人が本棚に入れています
本棚に追加
……くそ、あの女が大人しくしていてくれたら、こんなことにならなかったのに……。
俺も、斉木も、西川さんも。
電柱にもたれ、続く吐き気を何とか飲み込みながら身体を支えていると、後ろからばたばたと足音が聞こえた。
「君、君! 駄目じゃないか、現場で待っててくれと言っただろう!」
やってきたのは、さっきパトカーから降りてきた警官2人だった。俺は口元を拭いながら、深呼吸をする。
「どうした。気分が悪いのか?」
俺が嘔吐したことを察したのか、1人が心配そうに覗き込んできた。
もう1人は、無線で通報者を見つけた、と話している。さっき電話が壊れて切れたせいだろう。
諦めの境地になって、息をついた。
「……出たんで、もう大丈夫です。それより、友達が……」
「犯人を追っていった、と現場で女の子を看ていた女性から聞いたよ。君も追うなんて無茶をしてはいけない」
「……判ってます、けど、我慢できなくて」
「うん、うん。君の気持ちは判るけれど、更に何かあったら大変だからね。そういうのは僕達に任せてくれないか。それで、お友達と女はこっちに走ってきたのか?」
.
最初のコメントを投稿しよう!