173人が本棚に入れています
本棚に追加
当たり前にあった少女の羞恥はどこにいったんだろう。
俺が大事に大事に、ひとつひとつほどいてきた可憐な恥じらいは、どこに消えたんだろう。
愛してる。
愛してるよ。
どんなふうに時間を重ねても、君が俺を見つめる目がどんな色を帯びようと、ずっとずっと愛してる。
この想いが変わっていくことはあっても、色褪せることのないよう、俺は護っていけるよ。
だけど、陽香。
そんなの勝手だ、って怒るかな。
もう少し、幼い君を見ていたかった。
その変化はいつだって俺の腕の中で、今だってそうで……。
それを一秒たりとも見逃すことなく、俺は見ることができたと思ってる。
君が、蛹から蝶へと姿を変える、その瞬間を。
だけど、どう言ったらいいだろう。
2人で大事に暖めてきた甘い空間を、君に断ち切らせてしまった。
俺の中に芽吹いていた黒いものを君は一瞬で嗅ぎつけて、刈り取りに来てしまった。
これまで、自分でどうにかしてきたことなのに。自分で、けりをつけなければならないことだったのに。
この悔いを、俺は一体どうしよう。
.
最初のコメントを投稿しよう!