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エアコンもつけず、窓も開けずに耽っていたせいで、気付けば汗だくで息苦しいことこの上なかった。
でも、夢中でお互いを貪っている間には、そんな感覚は消し飛んでいて。
心頭滅却すれば火もまた涼し。そういうことなんだろうな、とぼんやり思いながら身体を起こし、窓に向かう。
カラカラ……とベランダの窓を開けると、既に空気は夕方のそれで、スコールのようだった雨はいくらかましになっていた。
冷たい風が雨の間を通り抜けてきたように、急に吹き込んでくる。
リリン……と鳴った風鈴が、今はやけに寒々しく感じた。
……まだ、真夏なのに。雨がひどく降っているだけなのに。
胸に突然空いた穴の存在を、思い知らされたような気分だ。
背後で陽香が起き上がる気配がして、俺は窓に手をかけたまま振り返る。
いつも整えられている綺麗な黒髪が、見るも無残な状態だった。
お互い汗まみれで、加えて湿気の中でわけも判らず引っかくように撫で回したせいだ。
陽香がそんなふうに乱れている姿を見るのはいたたまれなくて、俺は洗面所の櫛を取ってくる。
ベッドの上でうなだれるように座り込んでいた陽香の隣に、腰を下ろした。
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