それを君に強いる僕。

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   甘い、いい夢だったんだと思わせてくれないか。  黒い染みがやがて広がって、2人でこの恋を両側から惨めに削って壊し始めてしまう──その前に。 「陽香なら、もっとちゃんと大事にしてくれる人と、会えるから。……幸せになって欲しいんだよ」  陽香は、泣き疲れた顔で見上げ──またもう1回、どんと俺の胸を叩いた。 「そんなこと、仁志くんにだけは言われたくない。今あたし、不幸だよ。世界で一番、不幸なんだから。仁志くんが、そうしたんだ」  いちいち一番効く言葉を投げつけてくる陽香を、それでも可愛いと思ってしまう。  ……この病を抱えたまま、ずっと、鈍く重い痛さに酔っていたい。  陽香はぽろぽろと涙を零しながら俺を見つめ、続けた。 「……幸せになんて、ならないで。あたしのいないところで幸せになんてなっちゃ……やだ……」  甘い棘を刺すようなその声で。  愛してると言われたようで、俺は堪らず泣き崩れた。  いいよ。  きみの呪いのようなその言葉を、俺はずっと持って歩いていくから。  それが俺にできる、最後のことだと思うから。  だから、さよなら──陽香。 .

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