流れ行く月日と共に

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 「おはようございます」  商店街の会長からイベント通知のチラシをもらってから数日後。店休日なので、朝早く起きた悠里は散歩をしようと外へ出た。孝彦との関係を見詰め直すきっかけになった散歩が、悠里の気分転換にもなった。  店休日だけの楽しみだが、コースは自分の好きに出来るので気楽だった。今日は、あの日とは反対方向に足を向け始めたところで、声がかかった。  「えっ?」  突然の事で、振り返るとあの花屋の店主だった。  「ああ、花屋さん! おはようございます。こんな朝早くにどうしたんですか?」  6時前なら朝早くと言ってもおかしくないのだが……  「いえ、今朝は寝坊をして、少し遅くなってしまいまして」  生真面目な顔付きでそんな風に返って来た。  「私にとっては早いんですけど」  クスリと笑う悠里に、「あ、えっと、その……」と返事にならない返事をしてくるので、悠里はクスクス笑いだした。そのうち2人で笑い出す。  「寒いですが、毎朝マラソンをしていまして」  笑いが収まると、そう話を切り出されて悠里は、へぇ。と目を丸くした。
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