267人が本棚に入れています
本棚に追加
「私はある時、疲れ果てまして。死ぬつもりで町へ帰りました。何も変わらない町。でも、心身共に草臥れた私の目に、生きる覚悟をする父の背中が入りました。……それを見て、ああ生きるってなんて難しく大変な事なのだろう。死ぬってなんて簡単な事なのだろう。って思ったのです」
「死ぬって簡単?」
「もちろん、死ぬ事を決意するのは大変ですし、実行も大変でしょう。簡単と言ったけれど、簡単じゃない。そう決意するだけの何かがあるんです。それでも死ぬ前に、ちょっとだけ視点を変えたら、生きる事を模索したくなりました。模索を始めたら、死ぬよりもっと大変だった。って事です」
私は、はっとした。まるで自分の事のよう、だったから。
最初のコメントを投稿しよう!