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「いらっしゃいませ」
本来なら、そう言われたはず。女将は私の顔を見ると、最後の“せ”を言い終える前に、言葉を詰まらせた。接客のプロ。旅館の女将とも有ろう人が、笑顔を凍らせ、言葉を詰まらせる程――
私の顔は酷いもの、なのかもしれない。
我に返った女将が、仲居を通じて私の部屋案内をする。普段から洋服を着て、クリスマスも祝って、実家も今時の、和室の無いフローリングの家で、部屋の中も普通にカーテンやテーブルなどで、“和”なんて一切感じた事の無い私。
でも、選んだのは、何百年と続いて来た、純“和”の老舗旅館。なんだか、笑える。
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